
こんにちは、髪ふさアドバイザーの吉宮です。
円形脱毛症というと、10円ハゲと呼ばれる、一つだけ小さな脱毛を思い浮かべますが、実は、いろいろなタイプがあります。
そして、円形脱毛症のタイプによって、治療法もそれぞれ違います。
「放置していても治る?」
「治療法にはどのようなものがある?」
「円形脱毛症になりやすい人って?」
「どのくらいで治る?」
など、ここでは円形脱毛症についての基礎知識と、現在ある治療法について見てまいりたいと思います。
円形脱毛症になりやすいのは、どんな人?
傾向というのは特になく、年齢、性別にかかわらず発症するのが、この円形脱毛症です。
原因に関しても、環境の変化や強いストレスをきっかけに発症する人もいますが、
そういったことがなくても、いつの間にか円形脱毛症になってしまう人もあります。
発症頻度としては、人種や国に関係なく、人口の1~2%程度で起こります。
また、年齢に関してですが、
患者の約25%は15歳以下で、多発型となると小さな子供に現れる割合が高くなります。
男女間で特に差はありません。
円形脱毛症はどうして「まるく」ハゲるの?
まるく脱毛するという特徴から、
その部分に広がる血管や神経の異常が関係しているだろう、と考えられています。
実は、円形脱毛症がなぜ起こるのか、ということは未だによくわかってはいないのです。
ただ、何らかの要因で毛根(毛包)が炎症を起こし、それによって毛根自体が破壊され、脱毛斑(だつもうはん)ができる病気です。
これは、髪をつくる工場である毛根が破壊されるので、そのために破壊されたその部分だけが脱毛してしまう、ということです。
たいていの場合、本人の気づかないうちに、部分的なまるいコイン型の脱毛病巣(脱毛斑)ができており、人から言われて初めて気づく、ということが多いようです。
兆候があるわけでもないので、気づきにくい、ということですね。
円形脱毛症の患者には、爪に変化(横線やへこみ)が生じるケースも、よく見られるようです。
そもそも円形脱毛症の原因ってなんだろう?
円形脱毛症の原因として、毛周期の異常や自律神経障害、内分泌障害などが考えられてきましたが、
先の項でも述べましたように、はっきりとした原因は未だに解明できておりません。
ただ、その後の研究で、わかってきたこともあります。
【円形脱毛症は免疫の異常が原因!?】
人間の身体には、病原体から身を守る「免疫(病を免れる)」というしくみがあります。
免疫に大きな役割を持つのが、血液中にある白血球の25%を占める「リンパ球」です。
このリンパ球は、Bリンパ球やTリンパ球、NK細胞と一緒になって、
体の外から侵入してきた細菌やウィルス、体にできた腫瘍(しゅよう)などの異物を攻撃し、やっつけてくれます。

体の防衛軍のようなものですね。
その働きによって、人間は仕事をしたり遊んだり、泣いたり笑ったり、病気になってもすぐに治って、また元気に暮らすことができているんです。
ところが―――。
ところが、円形脱毛症の場合、
この体の防衛軍であるはずのリンパ球が、いったい何を勘違いしたのか、いきなり身内である毛根を攻撃対象として動き始めるのです。
髪をつくりだす工場である毛根を、まるで侵入して来た外敵であるかのように攻撃し、委縮・破壊させる、ということがわかってきたのです。
細菌やウィルスなどの「外敵」から身を守るための役割を持つ「リンパ球」の反乱・・・いえ、異変ですね。
このことから
「円形脱毛症は自己免疫疾患(免疫の異常)である」
と考えられています。
そのほかの原因としては、遺伝的要素もありますが、遺伝がなくても、発症します。
インフルエンザや、精神的なストレスが原因で発症することもありますが、それらは、あくまでもきっかけにすぎないようです。
円形脱毛症にもいろいろなタイプがあるの?
一言で円形脱毛症と言っても、種類はいろいろとあります。
その種類によって治療法も、治療の難易度も変わってきます。
まず、大きく分けて、円形脱毛症には単発型と多発型があります。
単発型の円形脱毛症とは?
「単発型」というのは、1~2個のみの病巣です。
最も多いタイプで、「10円ハゲ」と言われる典型的な円形脱毛症ですが、
形はきれいな「円形」~いびつな「楕円形」まで、さまざまです。
多発型の円形脱毛症とは?
単発型と違って、多発型の円形脱毛症は、次々に何カ所も新しい病巣ができていくタイプのものです。
その多くは頭部に発症しますが、顔や体、四肢(腕や脚)にも現れます。
それがさらに重症化すると、頭を含め、全身の毛がほとんど抜け落ちてしまいます。
多発型には以下の三つのタイプがあります。
全 頭 型 | 頭全体の髪の毛が抜ける |
汎発(ばんぱつ)型 | まゆ毛、まつ毛も含んだ全身の毛が抜ける |
蛇行型(オフィアシス型) | 生え際に沿って帯状に抜けるが、頭頂までは進行しない |
このような脱毛が進行するときは短い切れ毛が目立ち、病巣の周りの毛も抜けやすい状態となっています。

手で梳いただけでゴソッと抜ける感じね。
「多発型」となると、重症化します。
女性の急性びまん型脱毛症
女性特有の円形脱毛症があります。
「Acute Diffuse Total Alopecia in Female(ADTAF)」という、
女性の急性びまん型脱毛症です。
この脱毛症では、成人女性が短い期間内(1~2か月)に、頭部全体から髪が抜け落ちる全頭型脱毛を発症します。
ただし、数か月で回復します。
円形脱毛症って人に伝染するの?
円形脱毛症の、これらの症状は伝染しません。
ただ、遺伝性については、まだよくわかってはいませんが、患者100人のうち1、2割程度の患者は、家族に同じ病気があるのも事実です。
円形脱毛症は種類によって治療法も違う?
円形脱毛症の治療の基本は、
「病気の勢いを抑えること」です。
ただ脱毛の勢いが強かったり、改善が見られないような重症の場合は、副作用との兼ね合いが難しいのですが、
ステロイドの内服薬を用いたり、
人工的な「かぶれ」を起こすことによる治療法がとられたりもします。
患者一人ひとりの症状、状態、年齢、持病によって治療法は違ってきます。
単発型の治療法
単発型に関しては、特にありません。
単発型の場合、多くは半年~1年ほどで自然に治ります。
特にストレスや生活習慣が要因の場合は、その環境改善・変化によって自然治癒します。
治りかけると、病巣の中心部に新しい細い毛が生えてきます。
【単発型の治るまでの対策】
円形脱毛がうまく髪の毛で隠れるならばいいのですが、そうでないなら、身のまわりのアクセサリーなどをうまく活用してみてください。
帽子やターバンをかぶったり、スカーフ(バンダナ)などを頭に巻いておくのも一つの方法です。
女性なら、幅広のヘッドドレス(カチューシャやヘアバンド)を、付けると、脱毛斑の位置によりますが、おしゃれに隠せますよ。
とは言え、仕事で、そういったアクセサリーや帽子を付けられない方は、薄毛隠しのヘアファンデーション(増毛パウダー)を試してみてください。
今では、汗や雨にも強く、シャンプーでサッと洗い流せる手軽なタイプが出ているので、そういったものをうまく利用すると、ストレスなく日常生活が送れると思いますよ。
ただし、単発型の円形脱毛症で病巣が小さくても、赤く炎症を起こしていたり、脱毛範囲が拡がっていくようであれば、早急な治療が必要となります。
できるだけ早く、医療機関を受診してください。
多発型の治療法
多発型・全身型は、完治が難しいとされています。
治療法としては薬物療法と刺激療法とがあります。
- ドライアイス圧低法(雪状炭酸圧低法)
- 液体窒素などの凍結療法
- 副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用や局所注射
- 紫外線照射法
- 人工的に「かぶれ」を起こす局所免疫療法(SADBE、DPCP)
現在、こういった治療方法が行われています。
副腎皮質ホルモンの内服は副作用があるので、慎重な判断のもとでのみ治療が行われます。
勝手な判断で中止したり、使い続けてはいけません。
その他には、アトピー性皮膚炎を合併する患者も多くみられることから、
抗アレルギー剤の内服が有効なこともあります。
もう少し細かく治療法を見ていきます。
初期で範囲が小さい円形脱毛症の治療方法
- 外用薬や内服薬で治療します。
- 外用薬(ステロイド、塩化カルプロニウムなど)
- 内服薬(グリチルリチン、セファランチンなど)
脱毛範囲が小さいものの、改善しない場合
- ステロイドの局所注射
- ドライアイス圧低法など
【ステロイド局所注射】
副腎皮質ステロイドを脱毛部位に注射していく治療法です。
一度の注射で薬剤が行き渡る範囲がせまいため、広く脱毛している方には不向きです。
強い痛みを伴い、注射した部分にのみ発毛作用があるので、やはり小さな病巣向けの治療法です。
また、副作用としては、注射した部分の皮膚がへこむことがあります。
- 保険適用です
【ドライアイス圧低法】
雪状炭酸圧低法とも呼ばれます。ドライアイスで脱毛部を冷却する治療法です。
痛みがあり、水泡ができることもあります。
急速に拡大していく場合の治療法
- 期間限定のステロイド内服治療が有効
- ステロイドパルス療法
【ステロイド内服治療】
長期間のステロイド服用で糖尿病などを発症する副作用があるので、服用期間は2か月程度の
1回きりの治療法です。
この治療法は、子どもには不向きです。
【ステロイドパルス療法】
ステロイドを点滴で導入する治療法で、入院が必要となります。
3日間で飲み薬の約10倍のステロイドを体内に入れる治療法ですが、円形脱毛症以外に特に健康に問題なければ、副作用の心配はほとんどありません。
1~2か月の短期間で大量の抜け毛があった場合に行う治療法で、毛包が炎症を起こしている早期に特に有効です。
効果が現れるまで半年ほどかかります。
脱毛範囲が広く、半年以上経過している場合の治療法
- 局所免疫療法
かぶれを起こす薬品(SADBE、DPCP)を脱毛斑に塗って、人工的にかぶれさせることを繰り返す治療法です。
円形脱毛症は、免疫の異常が関係していることがわかってきました。
ですので、わざと「かぶれ」を起こさせることで、局所(脱毛斑)の免疫状態を変化させて治そう、という考え方です。
この局所免疫療法は、現在、円形脱毛症には最も有効とされる治療法で、世界中で行われており、その発毛率は約60%です。
治療の方法としては、
「適切なかぶれ」を見極めるためのパッチテストを数回行い、
薬品の濃度を決定した後は、自宅で7~10日に1回、自分で脱毛部に塗布することで治療を行います。
効果が現れるまでに数カ月を要します。
ただ、治療を中止すると再発することもあり、そのために治療期間が数年にわたることもあります。
局所免疫療法の副作用とは?
【一過性の蕁麻疹(じんましん)】
局所免疫療法の副作用として、まれに一過性の蕁麻疹(じんましん)が出ることがあります。
一過性(いっかせい)なので、蕁麻疹が出ても、しばらくすると自然に消えます。
【かぶれすぎる】
また、多くの方は塗った部分が「かぶれすぎる」ことがあるので、薬品の塗り方や濃度などの調整が必要となります。
また、局所免疫療法は、
妊婦には不向きです。
皮膚科学会がまとめた現在の円形脱毛症の治療方法
日本皮膚科学会がまとめている円形脱毛症の治療法は以下のとおりです。
【外用薬療法】
- 副腎皮質ホルモン(ステロイド)
- ミノキシジル
- 塩化カルプロニウム
【他の局所療法】
- ステロイドの局所注射
- 局所免疫療法
- 雪状炭酸圧低法(ドライアイス圧低法)
- 紫外線(PUVA)療法
【全身療法】
- グリチルリチン
- セファランチン
- 抗アレルギー剤
- 副腎皮質ホルモン(ステロイド)
(参考資料:日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドライン)
円形脱毛症はどのくらいで治る?
円形脱毛症のタイプによっても治療効果は違います。
完治が難しいとされる、円形脱毛が複数ある多発型~全身の毛が抜けてしまう汎発型の場合は、治療を始めてウィッグなしで生活できるようになるまで、約1年かかります。
ただ、それも治療法が合って効果が出た場合で、半年経っても治療効果がなかった場合は、別の治療を考えなくてはなりません。
うまく治療効果が出た場合は、今生えている毛は抜け落ちます。
一時的に抜け毛が増えますが、心配いりません。
これは、毛包の炎症が治って新しい髪が毛穴の奥で育っているため、それに押し出されて古い髪が抜け落ちる現象です。
しばらくすると、新しい産毛が生えてきますよ。
まとめ
円形脱毛症の治療法には選択肢が数多くあり、それぞれに有効性はあるものの、決定打となる治療法というものがなかなかありません。
内服薬も、血行を良くする作用がある塩化カルプロニウム、リンパ球の働きを抑制する抗ヒスタミン剤、炎症を抑える作用のグリチルリチンなどがありますが、結局は飲み薬だけで治るものでもないようです。
治療は、患者一人ひとりの症状、その進行度や種類、病歴等によって、適切な方法を選びます。
現在のところ、円形脱毛症のガイドラインでも推奨されている「局所免疫療法」と「ステロイド局所注射」を中心に、補助的に飲み薬を使用していく、という方法が多いようです。
また、治療していく中で経過観察(治り具合を観察)しながら、より症状に合った治療法を選んでいくことが必要となります。