こんにちは、髪ふさアドバイザーの吉宮です。
今、再生医療は病気治療だけではなく、発毛治療や美肌治療など、コンプレックスを改善解消するための有効手段として、美容治療に用いられるようになっています。
これ自体は、とてもうれしいことですし、普及すればするほど値段もリーズナブルになって、私たちでも手の届くお値段で施術できるようになりました。
でも、この細胞を使った再生治療は現在進行形の新しい医療技術なんです。
つまり、まだ医者さえも想定していなかったリスクもあるよ、ということです。
そこで、今回は、公的機関が現在の再生医療を用いた各分野の施術に対して、どのような考えを持っているのかを、調べてみました。
毛髪再生治療に対する日本皮膚科学会の現在の考えとは?
では、期待は膨らむばかりの最先端の医療技術ですが、国や医師会などはどのようなスタンスで、この急速に進化を続ける再生医療を見ているのでしょうか。
まずは、「薄毛」の各種治療法に関してのレポートを挙げた、日本皮膚科学会の意見をご覧ください。
推奨度というのは、皮膚科学会が薄毛治療としての「おすすめ度」のことです。
現在行われている各種薄毛治療法をA~Dまでに分けていて、Aが「おすすめ!」の治療方法で治療効果があることがはっきりとわかっているものです。
例えば、AGA治療薬のフィナステリドは男性患者には「A」判定ですが、女性患者には「D」となっています。
D判定は「やめとけ」という治療方法です。
これを踏まえて、ご覧ください。
『推奨度:C2 行わない方がよい(有効のエビデンスがない。あるいは、無効であるエビデンスがある)。
これらの臨床試験の多くは、限られた施設における、倫理委員会の承認を必要とする先進医療の段階にあり、安全性なども含め、その有効性は決して十分に検証されているとはいえない。
以上の理由から、成長因子導入・細胞移植法は今後が期待される治療法ではあるものの、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則って施術する必要のあるものも多く、現時点では広く一般に実施できるとは言い難いため、行わない方がよいことにする』
(日皮会誌127「男性型および女性型脱毛症診察ガイドライン2017年版」より引用)
再生医療の美容への応用に対する厚生労働省の現在の考え
次に、厚生労働省の意見ですが、こちらは、再生医療全般に関してのものです。
『再生医療については、平成26年9月に、世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われるなど、着実に成果を上げていますが、再生医療は、これまで有効な治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、国民の期待が高い一方、新しい医療であることから、安全性を確保しつつ迅速に提供する必要があります。
このため、平成26年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と併せて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を施行し、再生医療等の安全性の確保に関する手続きや細胞培養加工の外部委託のルール等を定めました。
また、関係省庁と連携し、基礎研究から臨床段階まで切れ目なく一貫した研究開発助成を行い、臨床研究やiPS細胞を用いた創薬研究に対する支援など、再生医療の実用化を推進する取組みを実施しています。』
まとめ
こうして見ると、皮膚科学会も厚労省も、どちらも前向きな姿勢でありつつも、「安全性の確保が何よりも重要なんだよ」と、口を酸っぱくして言っていますね。
皮膚科学会の方は、このレポートは医師に向けた資料なので、医師の倫理観への問いかけでもあるのでしょう。
大昔から力を持った人間が、財宝を投げうってでも欲したものは「不老」&「不死」。
それは今も、未来もきっと変わらないのでしょうね。
私は「不死」には魅力は感じないけれど、「不老(アンチエイジング)」と聞くと耳がピクッとします。
「不死」には倫理と技術の壁が立ちはだかるけれど、「不老」のほうは医療費問題もあって、健康推進対策とからめてどんどんと進展していきそうですね。
健康であることと「見た目の若々しさ」「美容」は切っても切れない関係ですし、近い未来には、国民の大半が、見た目や健康年齢が実年齢の半分ぐらいでいきいきと活動しているかもしれません。
そして「薄毛」「若ハゲ」は世界を見渡せば、「不老不死」の次くらいに歴史の長いコンプレックスかもしれません。
コンプレックスというのは、いつの時代もお金を生み出す、ビッグ・ビジネスとなり得ます。
それぐらい、自分のコンプレックスを解決したい気持ちは、誰もが強く強く持っているものですよね。
ただ、そういう時には、自分にとって不利な情報、望ましくない情報というものを、無意識に排除してしまう傾向があります。
美容にしろ、薄毛治療にしろ、期待ばかりがふくらんで、大金をつぎ込んだにもかかわらず、望み通りの結果にならなかったとき、
「こんなはずじゃなかった!」と泣くはめになります。
もちろん悪いのは施術する側なのですが、少々厳しい言い方になるかもしれませんが、情報収集をおこたり、悪徳クリニックやドクターに丸め込まれ、飛びついた結果とも言えます。
あるいは、きちんと情報を精査していれば、ある程度、真実を見極め、トラブルから身を守ることはできたかもしれません。
日本皮膚科学会のガイドラインは、提供する側が、こと医療分野であるからこそ、需要の流れに呑まれることなく、医者としての倫理観を持って、治療に臨むべきである、ということを訴えているのでしょう。
私たち患者側としては、医師としての倫理観を持つ、誠実なクリニックやドクターを「選ぶ」必要があるということですね。
今回の、第三者機関による毛髪再生医療に関しての現段階の評価は――、
『安全性なども含め、その有効性は決して十分に検証されているとはいえない』
――とのことで、治療は自己責任です。
お医者様としっかり話し合って、望み通りの結果を手に入れてくださいね。